高血圧、高脂血症、糖尿病について

上記3疾患+喫煙は脳卒中と虚血性心疾患の危険因子です。
脳卒中と虚血性心疾患の危険因子という発想は、米国で行われたフラミンガム研究から始まりました。
国内では福岡県の農村で行われた久山町研究が有名です。
フラミンガムは1950年ころより3万人、久山町は昭和35年ころより7000人弱の市民(村民)を対象に疫学調査が行われました。米国では主に心臓疾患、日本では脳卒中の原因分析が行われました。これらの研究成果により脳卒中や心筋梗塞の予防法が明らかにされました。

高血圧について

症状 通常なし。中等度以上の場合、頭痛や頭重感、頭や頸に拍動を自覚することもあります。
診断
(正常値)
診察室で測定した場合、収縮期血圧が140mmHg/90mmHg未満。75歳以上の後期高齢者については、収縮期血圧が150mmHg/90mmHg未満
家庭で測定した場合には収縮期、拡張期ともに―5mmHgになります(135/85mmHg未満、後期高齢者では145/85mmHg未満)。
特定健診では高血圧予備軍を拾い上げる目的で130/85mmHg未満と低めに設定されています。

特定健診では高血圧予備軍を拾い上げる目的で130/85mmHg未満と低めに設定されています。

リスク
(合併症)
心筋梗塞、狭心症、脳血管障害、慢性腎臓病など。
治療 減塩食や運動など生活指導を行います。それでも十分に下がらない方、遺伝的に心筋梗塞や脳卒中などを発症する危険が高い方にはお薬が必要です。

高脂血症(脂質異常症)について

症状 なし。検診や心筋梗塞や脳梗塞、急性膵炎などを発症後に血液検査でわかる。
リスク
(合併症)
狭心症、心筋梗塞、脳血管障害、末梢動脈疾患など。
診断
(正常値)
中性脂肪:150mg/dl未満
HDLコレステロール:40mg/dl以上
LDLコレステロール:140mg/dl未満
治療 低脂肪食+運動療法で効果が不十分の時、お薬を処方させていただきます。

糖尿病について

症状 中等度以上の血糖値の上昇がある方は、口渇、多飲、多尿、体重減少、易疲労感を呈します。軽度の場合症状はありません。
リスク
(合併症)
細小血管障害として網膜症、腎症、神経障害、大血管障害として心筋梗塞、狭心症、脳血管障害、足壊疽など。
診断 ①空腹時血糖値:126mg/dl以上
②糖負荷試験2時間値200mg/dl以上、
③随時(食事時間に関係ない)血糖値:200mg/dl以上
④HbA1cが6.5%以上

①~④のうちいずれかが確認された場合、「糖尿病型」

空腹時血糖値:110~126mg/dl、および糖負荷試験2時間値:140~200mg/dlの場合、「境界型」
空腹時血糖値:110mg/dl未満および、糖負荷試験2時間地:140mg/dl未満の場合、「正常型」

特定健診では糖尿病予備軍を拾い上げるために、空腹時血糖値100mg/dl未満
またはHbA1c:5.6%未満と低めに設定してあります。

治療 食事療法と運動療法が基本となります。

糖尿病の食事療法について

多くの患者様がオーバーカロリーとなっています。糖質(ご飯や砂糖など)の制限をするのは勿論のこと、脂質を控えめにし、食物繊維を多く含む食品(野菜、海藻、きのこなど)をしっかりとるよう心掛けることが必要です。

適正なエネルギー摂取量の算出方法

エネルギー摂取量(カロリー)標準体重×身体活動量
標準体重=身長(m)×身長(m)×22
身体活動量:軽作業(デスクワーク)25~30kcal/kg
普通の労作(立ち仕事)30~35kcal/kg
重い労作(力仕事)35~kcal/kg

例:女性、40歳、身長153cm、体重60㎏、糖尿病、合併症なし
 仕事:軽作業(25kcal/kg)
標準体重=1.53×1.53×22=51.5(kg)
エネルギー摂取量(カロリー)=51.5×251,287kcal/日
エネルギー量の60%を炭水化物で摂取するとして1278kcal×0.6=772kcal/日
1日3食として1食分の炭水化物は772kcal÷3=257kcal/食
257kcalを単位(1単位は80kcal)に直すと、257kcal÷80=3.2単位/食
1食のごはんの量としては(1単位が50gに相当)、50g×3.2=160g/食
ごはん1合が米400gに相当しますので、
 1食あたり食べてよいごはんの量がイメージできるかと思います。

糖尿病の薬物療法について

 運動+食事制限(カロリー制限)をしても、血糖値が下がらない場合、薬を使って血糖値を低下させなければなりません。従来、主に処方されていたのは膵臓からインスリンの分泌を促進させる薬でしたが、最近では体内のインスリンの効果を長続きさせる薬が第一選択になっています。そのためにインスリンの効果が出すぎることによる低血糖や空腹感からの体重増加作用があまりないので、1日1回から2回の内服でかなり血糖値を改善させる効果が期待できます。
 さらに2015年6月より、週1回の内服で血糖値を下げる効果のある薬が登場しました。これにより糖尿病の治療はしたいけど、薬が毎日きちんと飲めない人にも治療の機会が広がりました。

◇上記の正常値は日本高血圧学会、日本動脈硬化学会、日本糖尿病学会の判定基準によります。

高尿酸血症・痛風について

症状 尿酸値が高値になりすぎると関節腔内に尿酸塩結晶が沈着して痛風発作(急性関節炎)を起こすことがあります。関節炎は足の親指の付け根や足首に生じます。ストレス、飲酒、運動などが誘因となることが多いようです。
リスク
(合併症)
高血圧、冠動脈疾患、慢性腎臓病、メタボリック症候群、尿路結石、痛風腎
診断 血清尿酸値 7.0mg/dl以上
治療 食事・飲酒など生活習慣病の改善とお薬が2本柱となっております。

高尿酸血症・痛風の食事療法

1)肥満体の方はまず、総カロリー量を制限し減量してください。
なぜかというと肥満は体内でのプリン体の合成を促進するからです。
ただし急激な減量は、逆に尿酸値の上昇を招くので注意してください。
2)プリン体が多く含まれる食品はあまり食べないように気を付けてください。
(参考資料)
プリン体が極めて多い食品:あんこう肝、鳥レバー、マイワシ干物
プリン体が多い食品:豚・牛レバー、マアジ・サンマ干物、カツオ、大正エビ
3)アルコールを控えてください。
アルコールはそれ自体にプリン体があまり含まれていなくても、アルコール自体の作用で尿酸値を上昇させます。
またアルコール飲料の中ではビールが特にプリン体を多く含むので注意が必要です。
4)水分を十分とってください。
尿の量が増加すると、尿酸の排泄を助けることになります。
5)野菜を十分にとってください。
尿が酸性になっていると、尿管結石ができやすくなります。尿をアルカリ性にするために、海藻や野菜、果物を食べるように心がけてください。

閉塞性動脈硬化症について

1)閉塞性動脈硬化症とは:
足の動脈硬化が進行して血流障害を起こす病気のことです。
2)症状(重症度を以下のI-IVの4段階で分類します。)
Ⅰ度:
連続した運動に不安を感じる。
Ⅱ度:
間欠性跛行(かんけつせいはこう)
一定の距離を歩くと足が痛くなり歩けなくなる。しばらく休むとまた歩けるようになること。
Ⅲ度:
安静時疼痛
じっとしていても足が痛む。
Ⅳ度:
潰瘍、壊疽(えそ)
動脈硬化で血液が届きにくくなった足先に、治りにくい潰瘍ができます。
足先の血流が全くなくなって腐ってしまう(壊疽)のこともあります。
3)診断
問診:喫煙歴があり、糖尿用、高血圧、高脂血症の方はハイリスク群です。
診察:下肢の皮膚の色、浮腫、抹消動脈の拍動を調べます。
検査:ABI(上肢と下肢の血圧の比)が0.9以下の場合、閉塞性動脈硬化症を疑います。
*当院ではABIの検査が可能な医療機器を備えております。
4)治療
Ⅰ )生活習慣の改善
禁煙、食事(動物性脂肪の制限、腹八分目)、運動、ストレス管理(休養、睡眠など)
Ⅱ )薬物療法
高血圧、糖尿病、高脂血症の管理の徹底、抗血小板薬
Ⅲ )フットケア
足を清潔に保つ、保温、靴、足のケガや傷の予防
Ⅳ )侵襲的治療
血管内治療、外科治療

診察をさせていただいた後、検査機器で動脈硬化の程度を判定します。動脈硬化の程度により、治療方針を決定します。