逆流性食道炎について

心窩部から胸部の不快感、酸の逆流、胸焼けを呈します。
胸部の症状は強く、心臓の痛みと間違えられるほどです。
有効な治療薬がありますが、漫然と服薬を継続せず、年に1度は食道癌などの悪性疾患を除外するために、胃カメラやバリウム検査といった画像診断を受けることをお勧めします。

胃・十二指腸潰瘍について

心窩部から季肋部にかけての持続的な鈍痛が典型的な症状です。潰瘍の場所によっては、背中の痛みとして現れることもあります。十二指腸潰瘍では食事により痛みが和らぐこともあります。
ストレス、ピロリ菌、痛み止めの薬などが原因とされています。
治療は酸分泌抑制薬が主体です。ピロリ菌感染を伴っている場合は除菌療法を行います。

腸炎・下痢について

● 感染性胃腸炎
細菌やウィルスの腸管からの感染が原因で下痢・腹痛・嘔吐が主症状となります。悪化すると、脱水症や菌血症による発熱、全身状態悪化から腎不全や血圧低下に至ることもあります。
症状
通常急性に発症し、大部分は1週間以内に軽快します。夏はカンピロバクター、病原性大腸菌、黄色ブドウ球菌など細菌が多く、冬はノロウィルス、ロタウィルスなどウィルスが原因となることが多いです。アジア、アフリカなど海外旅行からの帰国前後に発症する場合は、赤痢やコレラなどの感染も考慮します。
診断
腹痛や下痢回数、便の状態を聞きます。次いで原因菌(ウィルス)との接触機会や加熱が不十分な食品や外食などのエピソードも詳しく聞きます。最終的には便培養検査(細菌感染)や便中抗原検査(ノロウィルス)で診断を確定します。
治療法
まずは脱水状態の改善、次に腸管の安静を保つことです。細菌感染を強く疑う場合には、培養結果を待たずに抗菌剤の処方をすることもあります。下痢止めは菌(ウィルス)の体外への排出を遅延させるため、なるべく使用せずに経過を見ていきます。水分や食事がとれないほどの重症下痢の場合には、点滴や短期間の入院が必要となることもあります。
注意
すべきこと
細菌(ウィルス)は保菌者の便や唾液経由で他人に感染していきますので、衣類や床が便や唾液、吐物で汚染した場合は塩素系漂白剤で殺菌したのちに、ほかの人と一緒に洗濯をするようにしてください。また排便後の石鹸手洗いは言うまでもありません。 塩素系漂白剤による殺菌については、「トップページ」→「内科」下段の「ノロウィルスの感染予防について」をご参照ください。
● 慢性腸炎
慢性的な下痢や便秘を起こす病気としてストレスが原因で消化管の運動と知覚障害による過敏性腸症候群と消化管の免疫系の異常が原因の炎症性腸疾患に分けられます。
● 過敏性腸症候群
消化管運動をつかさどる神経は自律神経で自分の意思と無関係に食物の消化、吸収、排せつを行っています。ストレスのない状態では、食物は胃酸で分解され、吸収されやすい形となり、小腸でタンパク質や脂肪など栄養分を吸収され、大腸で水分を吸収され丁度よい硬さの便が排出されます。口から肛門まで通常1~2日間で、個人差はありますが通常1日1~2回の排便が正常です。
ところが、強いストレスを受けた時や、ストレスを感じやすい体質の方の場合、自律神経に影響を及ぼし、下痢や便秘、腹痛といった消化管運動の障害を起こすことがあります。
根本的な治療法はストレスのコントロールですが、消化器内科ではまず、食事やライフスタイルの改善により、自律神経や消化管に負担をかけないような習慣作りをご指導させていただき、症状に応じて薬を処方していきます。
● 炎症性腸疾患について
免疫系の異常のために、慢性的に腸で炎症がおこり下痢や血便、腹痛などが何週間にもわたり続きます。
潰瘍性大腸炎とクローン病が代表的な疾患です。好発する年齢層としては10~20代と40~50代に2つのピークがあります。近年の食事の欧米化のためか患者数は年々増加しています。5-ASAと免疫反応を抑制する薬(ステロイドや免疫抑制薬)が治療の中心ですが、食事中の動物性脂肪を減らし、ストレスを減らすことも大切なことです。
1日5回以上の下痢や血便が続く場合、早めに専門医で診察をうけるべきと思われます。

便秘について

● 診断
健常者の排便回数は1日3回~1週間に数回と幅があります。通常3日間排便がない場合を便秘と診断することが多い。
● 慢性腸炎
慢性的な下痢や便秘を起こす病気としてストレスが原因で消化管の運動と知覚障害による過敏性腸症候群と消化管の免疫系の異常が原因の炎症性腸疾患に分けられます。
● 生理
盲腸で液体状の便は大腸で水分が吸収されながら、蠕動運動で直腸まで送られます。直腸に便が到達すると直腸壁の進展により便意が生じ排便が促されます。
● 分類
便秘症は弛緩性便秘、痙攣性便秘に大別されます。
弛緩性便秘
大腸の蠕動運動の低下により便が大腸内で停滞した状態です。日本人では高齢の女性に多く、また何らかの疾病や外傷で長期臥床状態の方にもよく見られます。便秘は持続的で便意が少なく、腹痛を伴わないことが多いです。治療法としては、刺激性下剤を使用し、塩類下剤を併用します。漢方薬や高分子重合体、腸管運動調整薬が有効なこともあります。
痙攣性便秘
ストレスや不規則な食生活により大腸がけいれん性の収縮を生じ、蠕動運動が障害された状態です。便の移動が妨げられ硬い便が形成されます。便はウサギの糞のような兎糞となり、便意は間欠的で腹痛を伴います。治療法としては、生活習慣の改善、食後の運動など生活指導を行い、腸管運動調節薬を処方します。

その他の便秘症

直腸性便秘
排便を我慢することを繰り返すことにより生じます。治療法は朝食後の排便習慣の励行、食後の運動を基本に直腸を刺激する坐剤を使用することもあります。
器質性便秘
腹部の手術後の癒着や腸管の炎症や捻転、腫瘍などが原因の物理的な便の通過障害です。数日~数週間で症状が生じた場合には、大腸の内視鏡検査や腹部CTなど大腸がんや腸ねん転などの除外診断が必要となります。腹部手術後の慢性的な便秘に対しては有効な漢方薬があります。
食事性便秘
食物繊維の少ない偏った食事や小食が原因で生じます。治療法としては食物繊維の豊富な食事を十分に摂っていただくことです。

便秘と漢方薬

弛緩性便秘
大黄甘草湯、桃核承気湯、麻子仁丸など大黄を含む薬がよく使われます。
大黄甘草湯は大黄と甘草からなる誰にでも使える下剤ですが、効果がシャープなため効きすぎに注意が必要です。
桃核承気湯は女性のイライラやのぼせ、ニキビなど月経関連の症状にも有効です。麻子仁丸は高齢者や虚弱体質の方(便がコロコロ)に有効で、効き方はマイルドです。
痙攣性便秘
芍薬を含む桂枝加芍薬大黄湯、桂枝加芍薬湯などがよく使われます。
芍薬は消化管の攣縮を緩める作用があります。
芍薬を含む薬としては効果の強い順に桂枝加芍薬大黄湯、桂枝加芍薬湯、小建中湯、腸潤湯となります。体力のある人は強い薬、高齢者や弱々しい人は弱めの薬から処方します。
イライラ、自律神経失調気味の女性の方には、更年期障害や月経困難にも有効な加味逍遥散が使われます。
外科周術期や腸閉塞予防、治療
大黄を含まない大建中湯がよく使われます。大建中湯は術後以外にも体力が低下した人で、腹が冷え、腹部膨満のある方に有効です。